ブックタイトルほぼハッピーマガジン Medetta! Vol.005 電子版

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ほぼハッピーマガジン Medetta! Vol.005 電子版

Words大宮エリー『生きるコント』[文春文庫]2Book気持ちを後押ししてくれる映画や本、音楽を知らず知らずに求めていませんか。今より少しだけやわらかなハートをつくるための作品を紹介しますtext /卯月野風こころの栄養BookやわらかいハートをつくるMessageMedetta自分自身を、笑える?エッセイを読む立場から見つめてみると、その出来事の多くは、私たちの日常にも転がっていて、誰にでも起きそうな出来事であることが感じ取れます。ただ、その出来事との向き合い方やそこから感じ取るものが、著者の個性であり、魅力なのかもしれません。 笑ってしまうことは事実ですが、本を読み進めていくと、ただ笑いを綴ったエッセイではないことがだんだん伝わってきます。そこには、著者の辿ってきた道のりの凹凸や、その中で感じた喜びや悲しみが、ある方向に爆発的ににじみ出て、その勢いのすごさが、他者からは笑いに思えてしまうという構造があるように思います。そのくらい、著者は全力で生きていて、つねに物事と正面から向き合っていて、ある意味、とてつもない勇気を持って、行動しているように見えてきます。 人生に降り掛かってくる出来事と100%向き合うというのは、意外と難しいことかもしれません。それが悲しい出来事や大変な出来事であればなおのこと、回避したり忘れようとしたりするものです。でも避 2006年から2007年にかけて週刊文春に連載された大宮エリーのエッセイをまとめた1冊。『生きるコント2』もある。大宮エリーという女性は、映画監督であり、脚本家であり、演出家でもあり、CMプランナーでもあり、ラジオのパーソナリティやテレビの仕事もしてしまう、とにかく活動範囲の広い人物。独特の視点や表現で作品を世に出していますが、この本に登場するエッセイは自身のさまざまな体験を綴ったもので、題材は「大宮エリー」そのもの。そして、読んだ人をまず笑わせてしまう言動と、それを切り取る文章力が、キラッと光る一冊だといえます。 エッセイとはいえ、3ページも進めば大爆笑してしまう本なので、カフェや電車など、まわりに知らない人がいる場所で読むことはおすすめできません。かといって、独りの部屋で読みながら爆笑するのも不気味ですが、どちらかといえば、そういう読み方にしておいた方が安全でしょう。 突飛な行動や独特な思考から生まれる出来事は、ウケを狙ってやっているのか自然に起こっているのかわからないほどですが、けられないことや忘れられない悲しみがあることも事実。そんなとき、どうすればそれを乗り越えられるか、どうすればそれを受け入れて、次に進めるかということへの特効薬は、自分でそれを笑ってみることかもしれません。そして笑いに変えてしまうには、起こってしまう出来事とできるだけ正面から向き合い、全力で考え、ときには勇気をふりしぼってみることが必要なのかもしれません。 人のピンチやトラブルは、他人からは滑稽に見えることがよくあります。それは、その人が本気で困っていて本気で戸惑っているときに、あまり見たことのない、いわば人の本性みたないなものが溢れ出し、そのパワーがひしひしと伝わってくるときです。 思わず笑わずにはいられない、どうみても滑稽に見える人のパワーとはどこから来るのか。大宮エリーの体験を自身が描いたエッセイ集『生きるコント』は、自分をむき出しにできないときの、そして悲しみの勢いに押され気味なときの、まさに「生きるヒント」だといえます。59